さん:ライバル現る!
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家主が頭を抱えているというのにも関わらず、ケビンはベッドの上に寝そべり大きな笑い声を上げ続けている。 と、それに被さるように階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた。 そして、勢い良く開かれる扉。 「シュウイチ!今日こそお前の息の根を……って!?何でお前がここに!!」 茶色の髪に銀の目をした青年は、部屋の入口でケビンの姿を目にすると後ろに飛び退いた。 一方ケビンは青年の姿を確認すると、ベッドの上から跳ね起きる。 「飛んで火にいる夏の虫とはまさにお前のことだ、ヒロシ!!大人しく狩られやがれ」 そう叫ぶと胸元から十字架を取り出して、ヒロシと呼ばれた青年に向かって翳した。 「卑怯だぞ!」 そう叫ぶのと同時に、ヒロシの動きが固まる。どうやら十字架の効力の所為で身動きが取れないようだ。 「ふははははっ唸れ俺のパイソン!!」 ケビンは素早く拳銃を腰から抜くと、高笑いを上げながら引き金を引いた。 銃口から勢い良く銀の銃弾が飛び出す。 弾はそのままヒロシの額……ではなく、その横の壁を打ち抜いた。 ヒロシはぎりぎりの所で何とか弾を避けることに成功した。 「こんな至近距離で狙うんじゃねえよ!危ねえじゃねえか!」 息も荒く喚くヒロシに、ケビンは舌打ちすると言った。 「避けてんじゃねえよ。大体ここで狙わねえでいつ狙うっんだよ?お前俺が何だか分かってねえのかよ」 「バンパイアハンター、だろ?」 さも当然とばかりに答えるヒロシに、ケビンの目の色が変わった。 「そうだ。分かってんじゃねえか俺はハンターだ。で、お前は何だ?お前は吸血鬼だろ?俺に狙われて当然だろ?なあ?」 ケビンははヒロシの頬を十字架でぴたぴたと叩く。凄まれたヒロシは一瞬返答に戸惑った。口を魚のようにぱくぱくとさせた後で、 「なら、俺の前にそこにいるシュウイチを狩れよ。俺だけ狩るなんておかしいじゃねえか!それとも何か?お前は狼型吸血鬼(ウルフタイプバンパイア)専門のハンターなのかよ?」 そうヒロシが言い放つと、ケビンはにやりと不気味に笑った。 「俺はなあ、十字架とニンニクと銀の銃弾に怯える吸血鬼の顔が何より大好きなんだよ。こんな女しか弱点の無い様なへたれ吸血鬼を狩っても面白くないだろう?くくくく」 そのケビンの表情に、ヒロシの顔色が変わる。 「ほらほら、その顔。その顔が何より俺は好きなんだよ」 更に不気味に笑うケビンに、ヒロシは後ずさる。 「へ、変態がいる……!!」と、ヒロシが思ったかどうかは定かではないが、その表情を読み取るに、それに近い感想は抱いたのだろう。 更に十字架を眼前に突きつけられ、ヒロシは硬く目を瞑った。 ぶるぶると身体が震えだす。 そして、次の瞬間。 ぼわわんっ そこに茶色い髪に銀色の目をした青年の姿は無く、代わりに茶色い毛をした狼の姿があった。 十字架に耐え切れなくなったヒロシは、どうやら人の姿を保っていられなくなったようだ。 「ちくしょー覚えてやがれ!!」 そう言って、ヒロシ(狼)は窓ガラスを大きな音を立てて突き破ると、二階から外へと飛び出して行った。 「んだよ、これからがお楽しみだってのに」 心底悔しそうに、ケビンは手にしていたコルトパイソンを見つめた。 騒動の間ずっと頭を抱えていたタナカは、窓ガラスの割れる音で我に返った。 だが、今度は割れてしまった窓ガラスを見て頭を抱えたのだった。 |
2004年12月23日 日誌にup
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