に:狩る者と狩られる者






「で。鞄を放り投げてそのまま飛んで逃げてきた、と」
週間雑誌を読みながら投げやりにそう言ったのは、金髪碧眼の少年―――ケビンだった。
「真面目に聞いてくれよ!俺明日っからどうやって学校に行けばいいんだよ」
lの姿に戻ったタナカは金髪の少年に縋りつく。
しかしケビンは手にしている雑誌に夢中で、タナカの事など眼中に無いといった様子だ。
「ったく面倒くせえなあ。今週のハンターノートまだ途中なんだよ」
そう言うと、くるりとタナカに背を向ける。
「つかそのステップ俺のだろ!?」
「いちいち細かいな。いいじゃねえか。マンガだって読み手がいなけりゃただの紙切れになっちまうんだから。可哀想だろう」
「可哀想なのは俺だっての!!」
「あーはいはい」
ぱたん、と音を立てて雑誌を閉じると、ケビンはタナカに向き直る。
「で、お前はどうしたいわけ?鞄を返してもらいたいの?」
「そりゃもちろん、返してもらわないことには困るよ。あとは、俺のことを忘れてもらえれば……」
「あーそりゃ無理だろ。目の前でコウモリに変身しちまってたらそりゃどうにもフォローのしようがねえなあ」
ケビンは再び雑誌を手に取ろうとする。それをタナカが阻んだ。
「だからお前に相談してんじゃねえか!!」
「つかお前勘違いしてねえ?俺の職業は何よ」
真剣な眼差しでケビンに問われ、タナカは憮然として答えた。
「……パンパイアハンター」
「分かってんじゃん?俺は吸血鬼は狩れても人の記憶を隠蔽するとかそういう特殊な事は出来ないわけ」
そう言って再び雑誌に手を伸ばす。
「そこを何とか!!」
「何とかもかんとかも無理だっての。いっそその子に本当のこと話た方がいいんじゃねえの?」
雑誌に目を落としながらケビンは言った。
「流石にそれは……」
「でもその子かっこいいって言ったんだろ?なら大丈夫なんじゃねえ」
ケビンは耳掻きで耳を穿りながら言う。もうタナカのことなどどうでもいいようである。
頭を抱えて悩みだすタナカを余所に、ケビンは雑誌を読みながらそれはそれは楽しそうな笑い声を上げたのだった。





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2004年12月20日 日誌にup

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