梟の啼く夜  





―――それは、記録には残らなかった恋の物語。






 

あの夜を覚えている。
館中が悲鳴と怒りで満たされたあの夜を、覚えている。
幼い弟たちと、震えながら抱き合うしかなかった。互いが信頼できることを確かめるかのように、きつく。
最初に報せを持ってきたのは誰だっただろう。
私は、私たちは、理由の分からぬまま館中が悲しみに包まれていくのを見た。


あの夜を覚えている。
父が殺され、母はその後を追い、そして、弟たちが遠くへと逃げた、あの夜を。
あまりにも多くを失った、あの夜を。
けれど、けれど私は。
私には、あの夜に得たものがある。
たくさんのものを失う傍らで、私は恋を得た。
まるで、代償のように。
唯一つの恋を―――。


あの夜を、覚えている。






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