クリスタル〜紅の歌姫〜





T

―――深夜。
森に囲まれた街道。
暗闇の中、どこからか言い争う声が聞こえてくる。
常であれば人などいない時間帯と場所である。
遠くに小さな炎が灯り、消えた。
そこから勢い良く駆けてくる人物が、二人。
どうやら言い争っていたのはこの二人のようだ。
「だーかーらっ!悪かったって、言ってんだろ!?」
「悪いと思っているのなら、態度を改めてもらいたいな」
二人は背後を気にしながらも口論をやめようとはしない。
「謝ってんだろ!?シグマって心が狭いんじゃねえの!?」
マントでその身を覆い隠した少年は、紅い瞳で長身の青年を睨みつけた。
銀髪に透き通るような白い肌をしたその姿は一見すると少女のようである。口さえ開かなければ、勘違いしたままの人間は多いだろう。
「この状況に追い込んでおいて、よくそんな口が聞けるな、オメガ」
シグマと呼ばれた青年は、後方を振り返って言う。一つに束ねられた金色の髪が翻る。
手には、実用第一といった質素な造りの剣が握られていた。シグマは小さく舌打ちする。
「くそっ、まだ追ってくる」
視線の先には、夜の闇に紛れてしまいそうな黒い靄のような物体がいた。
それは、蠢きながらこちらに向かってくる。
シグマは溜息を一つつくと、オメガをちらりと見やった。
視線の意味に気づいたオメガは、ムッと頬を膨らませる。
「仕方ないだろっ、あれは不可抗力ってやつで!」
「人の忠告を散々無視しておいて、か?」
言葉に含んだ棘を隠そうともせずにシグマが言った―――次の瞬間!
黒い靄が勢いよくシグマに向かってくる。
「―――シグッ!!」
オメガが叫ぶ。

ザンッ

シグマは剣でそれを二つに切り裂いた。だが、手ごたえはなかった。
靄は、今度は二つに分かれて襲いかかってきた。
「嘘だろ!?……炎の精霊よ!汝の主が命じる。黒き影を全て焼き尽くせ!!」
オメガが早口に呪文を唱えると、掌に小さな炎が生まれた。それは大きく膨れ上がり、一瞬球体になったかと思うと、まるで炎自体が意思を持つかのように黒い靄に向かっていった。
「やった……!?」
「いや、まだだ」
炎によって靄が霧散したと思ったのも束の間、今度は四つに数を増やしていた。
「また増えんのかよっ」
オメガはがっくりと肩を落とす。
「こいつを呼んだのはお前だからな」
「ハイハイ。分かってますよ。責任取ればいいんだろ?……アレやるからさ。シグ、時間稼いでおいてよ」
「俺だと、更に数を増やすことになるが?」
「良いって。一気に片つけるからさ」
「了解」
シグマはそう言うと、オメガを守るように一歩前に進んだ。後方でオメガが呪文を唱え、結界を作り出すのを確認すると剣を構えた。
そして、地面を力強く蹴り、跳躍した。そのまま靄に切りかかる。
やはり、手応えは無い。
「一体どこまで増えるんだろうな」
また数を増やした靄を見て、シグマは不敵に笑った。
一方、結界を生み出したオメガは、その中で四大元素を一つ一つ呼び出していく。
「炎の精霊よ!」
ポウッと、赤い球体が結界の中に浮かんだ。
「水の精霊よ!」「土の精霊よ!」「風の精霊よ!」
青、茶、緑、とそれぞれを象徴する色の球体が結界の中に浮かび上がった。
緊張で乾いた唇を湿らせると、オメガは四つの球体を自分の掌の中に集め、混合させた。
結界の中の温度が、急激に上昇する。高圧の空気が満ちる。
一つになった球体は徐々に大きくなっていく。それに合わせて結界も膨張していく。
裂け目がちょっとでも入れば、周囲のものを巻き込んで爆発してしまうだろう。
オメガの狙いはそこにある。
最も爆発が大きくなるであろう瞬間を、じっと待つ。
目の前では、シグマが増えすぎた敵相手に剣を振るっている。
ちりっと、何かが神経に触れた。

―――今だ!

「シグッ!!」
オメガが叫ぶ。その声を聞いたシグマは、無数の靄を引き連れてオメガに向かってくる。
そして、結界に裂け目を入れるために思いっきり剣を振り下ろした。

キンッ

どおっ、と結界に溜まっていた熱い空気が、一気にシグマと敵に向かって噴出した。
そして、爆発。
辺り一面に砂煙が舞い上がる。

「一歩間違ったら、死ぬなこれは」
砂煙が薄れていき、シグマの姿がはっきりと見えた。
あの爆発に巻き込まれておきながら、シグマの身体には怪我一つ無かった。
結界が破れた瞬間、オメガが瞬時に対象を切り替えたのだった。
オメガだからこそ出来る荒業である。
「俺が失敗したことあった!?」
「今まではな。だが、これからは分からないだろ?」
「ちっ信用ねえの」
「自分の行動を振り返ってから文句を言え。今のに襲われたのだって……」
シグマが言い終わらない内に、どこからか拍手が聞こえてきた。二人は顔を見合わせる。
「素晴らしい。実に素晴らしい」
その声は、二人の背後から聞こえてきた。
振り返った先にいたのは、片眼鏡をかけ口髭を蓄えたどこか紳士然とした男だった。男は口の端を吊り上げてにやりと笑う。
「噂通り、いやそれ以上の素晴らしさだ」
オメガは、シグマの腹を小突くと、小声で言った。
「誰だよ、こいつ」
「知るか」
シグマも小声で返す。
そんな二人の様子から察したのか、男は丁寧に礼をすると言った。
「これは失礼。わたしはアルゼ・アレキサンドロフと申します。人は“黄昏のアルゼ”と言いますがね」
「は?黄昏?」
「その名の由来は、時期に分かりますよ」
アルゼは片眼鏡に手をかけるとにやりと笑った。そして―――。
「デルタ!」
アルゼが叫ぶと、二人の前にどこからともなく、突然1人の女性が現れた。
腰まである紅の髪。目に光は無く、焦点が定まっていない。
その肌の色は、驚くほど白かった。いや、青白いと言った方が正しいか。
「……!?」
その姿を見て、シグマははっとした。
「甦りし者、か……」

甦りし者―――それは、死した後に再生者と呼ばれる術者によって再び命を吹き込まれた者のことである。生きていた時に優れた術者・戦士であればあっただけ、死後に得られる力も大きい。
だが、甦りし者に生前の記憶は無い。意思も持たない。
そこにいるのは、再生者に従うだけの操り人形。
そして、再生者が死者を甦らせることが出来るのは、その人物が死んでから6時間以内でなければならない。

「分かりましたか?私の名前の由来が」
「人の死に際に現れるが故か」
低く、怒りを押し殺してシグマは呟いた。
「この詩的表現を理解してくださるとはね。……ですが、死んでいただきますよ?」
アルゼは冷徹な笑みを浮かべて言った。そして、指を鳴らす。
女性が、ゆっくりと口を開いた。
次の瞬間、それは聞こえてきた。

叫び。

空を切り裂いてしまうかのような、高音の声。悲鳴。
否、歌だ。
悲鳴によく似ていたけれど、それは確かに歌だった。
高音の声に混じって、微かに聞こえてくる旋律。
呪いの歌。
分かっていながら、二人は耳を塞ぐことが出来なかった。
彼女の悲しみが、二人の心に侵入する。侵蝕される。
心臓を握りつぶされてしまうような感覚。
一瞬、彼女の瞳に光が戻ったようにオメガには見えた。

(タス……ケ……テ)

薄れゆく意識の中で、確かにオメガはその声を聞いた。




U




これは、誰の記憶?誰の悲しみ?

騒音。
雑音。
怒声。叫び。悲鳴。
それに混ざって聞こえてくるのは、旋律?

星、の……き…月の……た

呪い。

災いを呼ぶ紅い髪。
殺したのはお前。

天空…に……く子守……

奪ったのはお前。
私たちの幸福を!

……う子…は…草……の風

不吉の象徴。
死ね。殺せ。殺せ!殺せ!!殺せ!!!

―――悲鳴。


唐突にオメガは目を覚ました。勢い良く起き上がる。
まとわりつく汗と不快感。
起き上がったはいいが、激しい眩暈と頭痛に襲われ、思わず顔を手で覆った。
「オメガ……?」
シグマが心配そうに声をかけるが、返事をする気にはなれなかった。大丈夫だと手を振って見せながら、もう一度横になる。
洗いたてのシーツの匂いがした。ベッドに寝かされていたところをみると、そんなに酷い扱いは受けていないようだ。
横になったことで眩暈と頭痛は大分軽くなったが、身体は泥に浸かっているかのように重く、だるかった。
「ここは…?」
「どうやらアルゼの屋敷の一つらしい。場所までは特定できないが」
「ふうん。シグは、何ともないの?」
「ああ。特にこれといっておまえみたいな症状は出ていないな」
「マジで!?不公平!!」
「多分、持っている魔法力の差で影響力が違うんだろう。それだけ、お前の力が強いってことだ」
「くそー、この気分の悪さを半分でもわけてやりてえっ」
「いらん」
「優しくねーの!」
冷たく即答したシグマに、オメガはブチブチと文句を言いながらも部屋を見回す。
質素な作りの部屋だった。小さなテーブルに赤いテーブルクロス。椅子とベッドが二つ。
窓がないことと、部屋が内側から開かないということが二人が囚われの身であることを示していたが、それ以外は普段泊まる安宿とあまり変わりは無かった。
オメガは、赤いテーブルクロスを見つめる。
「なあ……」
「なんだ」
躊躇いがちに、オメガは口を開いた。
「…あの人。あの、デルタとか呼ばれてた人。あの人、本当に甦りし者なのか?なんか、今まで出会った奴らとは違う気がするんだ。そりゃ、そんなに大勢甦りし者を見てきたわけじゃないから、断言は出来ないんだけどさ」
「違うっていうのは、どの辺が?」
「どこって、はっきり言えるわけじゃないんだ。ただ、何となく……。それに、あの人、俺に言ったんだ。『助けて』って」
「確かにか?」
「うん。それは、断言できる」
「だが、彼女の姿は確かに死者のそれだった…」
ふむ、とシグマは顎に手を当てて考え込む。
と、鍵を開ける音がしたので、二人は身構える。

「お目覚めですか?」
人の好さそうな笑みを浮かべてアルゼが現れる。二人は身構えたままアルゼを睨みつけた。
「これはこれは。武器を取り上げられたというのに、よくそんな態度がとれますね。さすがはクリスタルの継承者、というべきですかな」
「―――!?」
その言葉に、二人は驚愕する。
「噂通り、と申しませんでしたか?金の髪の剣士と銀の髪の魔法士の噂は、広く知られていますよ。6thクリスタルとラストクリスタルを持つ者としてね。街中でマントを脱がれるとは、迂闊でしたね」
「っくそ!あの酔っ払いめ!!」
オメガは街中で絡んできた二人の酔っ払いを思い出して腹を立てる。
シグマは冷徹な眼差しをアルゼに向けた。
「あんたの狙いも、クリスタルか」
「くっだらねー」
オメガはやってられないとばかりに両手をあげる。アルゼは、オメガを睨み付けた。
「くだらない!?あなた方にはクリスタルの価値が分からないのですか!?…そう、きっと手にしている者には分からないのでしょうね。持たざる者の嘆きが」
「…嘆き、ね」
「世界を再び一つにするために、平和を取り戻すために、クリスタルが必要なのですよ?なのにそれをあなた方は個人のものとして手放そうともしない!なんと愚かな!!どうです、私に譲ってはいただけませんか?もちろんただでとは言いません。それ相応のお礼は支払います。私なら、クリスタルを有効に使うことができる!」
自分のセリフに酔ったように、アルゼは語る。
だが、それに対して二人の反応は冷たかった。
「有効に、世界を支配するための道具として、か?」
「譲れないね」
世界のためだと言って、クリスタルを狙ってくる者は多い。そして、そのほとんどがクリスタルを己のための私利私欲の道具として使おうとしている。
何度、そんな人間に出会ったか分からない。そして、大抵の人間が二人のこの発言に怒り狂うのだ。
アルゼもその口だろうと身構えたが、予想に反してアルゼは穏やかなままだった。
「そう仰ると思ってましたよ。ですが、私が既にクリスタルを一つ所持しているとしたら如何ですか?」
アルゼが懐から取り出したのは、紅に輝くクリスタルだった。
「セカンドクリスタル!?」
「草原に伝わるというそれが、何故ここにある?」
「なぜでしょうね?」
アルゼはそう言ってにやりと笑うと、手袋をはめた手で愛しそうにそれを撫でた。
「良い返事をお聞かせいただくまでは、こちらに滞在していただくことになりますな。そうそう、魔法力を封じる結界を張っていますから、無理はなさらないことですね」
扉の向こうのアルゼの笑みを、二人はただ静かに見つめていた。




V




「あのクリスタル…」
「ああ。確実に、あのデルタって人のものだな」
クリスタルの色を見たシグマは、そう確信する。
何故かクリスタルの継承者には、自身の持つクリスタルと同じ色が身体のどこかに現れることが多い。
シグマも例外ではない。シグマが継承しているのは、6thクリスタルと呼ばれる金のクリスタルである。
だが、ラストクリスタルを継承するオメガには、それは当てはまらない。
ラストクリスタルの放つ色は、人には作りえないものである。そして、オメガはその色を身体のどこにも宿してはいない。
オメガのような例外はあるにしろ、クリスタルの継承者とクリスタルの色には深い関係があった。
「けど、クリスタルは本人が死ぬか、本人が認めた人物に継承するかしないと、持ち主の手を離れないはずだろ?」
「そう。だから、奴はデルタを甦りし者にする必要があったんだろう」
「ってことは、クリスタルを奪うためにあの人を……!?」
「多分な」
「信じらんねー!俺、絶対あいつには渡さねえ!!」
「殺されても、か?」
「俺はあいつなんかには殺されない!!」
オメガはそういうと、勢いよくシーツを被った。
「寝るのか?」
「起きてても意味ないしね!」
オメガの不機嫌な様子を見て、シグマはやれやれと肩をすくめた。
「人は綺麗なだけじゃない。己の欲望のためなら、何でもする。そういう人間もいる」
シグマのその言葉に、しばらくして布団の中からくぐもった声が聞こえてきた。
「……分かってる」
「ならいいさ。……腹、出すなよ」
それに対しての返答は無い。大方、「子どもじゃねえよ」とでも思っているのだろう。
シグマはふっと表情を緩めると、椅子の背に深くもたれ掛かった。
オメガの寝息が聞こえてきたのを確認すると、シグマも軽く瞳を閉じた。
休める時に休む。
それが、旅をする者の鉄則だった。




                  ◆




どこまでも広がる、一面の緑。
遥か彼方に地平線が見える。
頬を撫でていく風。草の匂い。

「……草原……?」

オメガは、どこまでも続く緑の中に、一人立っていた。
草原は、どこの国にも属さない。どこの国も侵してはならない。
それは、遥か昔から決められていた事。それを破る者はいない。破れば、草原を守る神々から罰を与えられる。そう、伝えられていた。
だから草原の民は古からの遊牧という暮らしを、今も守り続けることが出来ている。
歌が、聞こえてきた。
声のする方にいるのは、紅の髪を風に靡かせている―――デルタ。
「あんた、デルタ!」
オメガは、デルタに向かって駆けて行く。けれど、走っても走っても、デルタとの間にある距離は縮まることがない。代わりに、歌声だけが大きくなる。


星の囁き 月の歌

……リタイ。

天空に響く子守唄

帰リ、タイ……。

歌う子には 草原の風

帰リタイ。帰リタイ!帰リタイ!!

祈る子には
 
帰リタイ!!!


いつしか歌声は、その声に掻き消された。
歌声を消してしまうほどの、声。
それは、デルタの心からの言葉。
オメガは、胸が締め付けられるようだった。
帰りたいと、切望する場所。帰ることの叶わない場所。
デルタは、そこへ帰りたいと願っている。死した後も。
「デルタ!!」
オメガは力の限りに叫んだ。
デルタは振り返る。オメガを見つけ、こちらに向かって歩こうとするが、何かに引っ張られたように立ち止まる。
視線の先には―――鎖。
長い鎖がデルタの足に絡みつき、そこから先へ進むことを阻む。
「デルタ!俺、あんたを助けたい!救ってやりたい!!……けど、そのためにはあんたをきちんと死の世界に送ってやらなきゃならない。そしたら、草原には帰れない。……それでも、それでも良いか!?」
デルタは、微笑んだ。
唇が、「ありがとう」と動いたようにオメガには見えた。




                 ◆




「俺はやる!!」
いきなり飛び起きるなり、オメガは叫んだ。
「うるさいっ。騒ぐな!!」
シグマは思いっきり白手袋を投げつけた。

びたんっ

オメガの顔面に勢い良くそれは当たったが、オメガは気にしない。
「シグ、俺やるよ!デルタを助ける!!」
「助けるって、意味が分かって言っているのか?」
勢い良くまくし立てるオメガに、シグマは真剣な面持ちで訊ねた。
「ああ。それでも、俺はやる」
オメガは、シグマをまっすぐに見つめ返した。
「それじゃあ、最初に俺の剣を取り返さないとな」
「手伝ってくれんの!?」
「アルゼを倒さなけりゃ、ここからは出られない」
シグマはオメガから白手袋を取り返すと、素早く身につける。
「さっすが、俺の相棒だぜ!」
「どうせ巻き込まれるなら、自主的に動いた方がマシだからな」
溜息とともに、シグマは呟いた。
「それより、どうやってこの部屋を出る気だ?魔法力は封じられているんだぞ?」
「そんなもん、結界を破るしかないじゃん?多分、この部屋以外に結界は張られてないはず。これくらいの小規模の結界なら、何とかできる」
「できるならどうしてさっさとやらないんだ」
「それをやると、俺の身体に負担がかかるんだよねー。それにさっきはすごい体調不良だったから、自信がなくてさ」
「……いいのか?」
「何とかなるでしょ。シグもいるしね。ってことで、何かあったらフォローよろしく!」
ビシッと親指を立てるオメガに、シグマは頷いた。
「了解」

「四大精霊よ!汝らの主が命じる。ここに集え!!」

常であればすぐさま現れるであろう光の球体が、姿を見せない。結界の中に入ることが出来ないのだ。
白い光のみが、オメガの掌に集まる。
だがそれは反発し、今にも暴れだしてしまいそうである。制御がきかないのだ。
「いいか、もう一度言う!ここに集え!主を傷つけることを恐れるな!!」
白光が、オメガの掌から飛び出そうとする。懸命にそれを押さえつけるが、反発する力は強大である。光が頬を掠めた。一筋、血が流れた。

「ここに、来い!!」

オメガが叫ぶのと同時に、光が飛び込んできた。赤・青・緑・茶の光の球体が混ざり合う。
光の爆発。
あまりの眩しさに、シグマは目を瞑った。
「うおっし!完璧!!」
その声に目を開けると、そこには衣服が多少ぼろぼろになったオメガの姿があった。
部屋自体に変化はない……ように見えるが、確実に結界は破壊されている。それは、空気の気配のようなもので分かった。
オメガは頬の血を拭うと言った。

「さーて、戦闘開始といきますか」


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