ぬけがら





どうして君は逝ってしまったんだろう。
僕がこんなにも愛しているのに。
こんなにも愛していると君に伝えたのに。
君の声の残された携帯電話。
留守電に残された伝言は、
「明日会えない?……大事な、話があるの」
どこか不安気な声で、君はそう告げた。
僕はそれを何度も何度も繰り返し聞く。
君は一体どんな話を僕にしようとしていたのだろう。
ねえ、何を話そうとしていたの?
問いかけても、君は答えてはくれない。
ひんやりと冷たくなってしまった君の手。
優しく僕の髪を撫でてくれた君の手は、あんなにも温かかったのに。
冷たくなってしまった君の唇。
くちづけると真っ赤に色づく君の唇に、僕は何度誘惑されただろうか。
あの微笑が、もう二度と見れないなんて。
あの声が、もう二度と聞けないなんて。
ねえ、どうして君は逝ってしまったの。
何を言おうとしていたの。
どうして。どうして。
ねえ、どうして。
どうして君は逝ってしまったの。
どうして―――!!



――どうして、僕の手にはナイフが握られているんだろう。
君の血で真っ赤に染まったナイフが。
どうして、僕の手の中にあるんだろうか。
どうして……?


<了>




お題:ぬけがら/椿屋四重奏
彼も彼女も、ぬけがら。

2006年3月8日 up
素材:「廃墟庭園」





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