神様の電話
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プル、プルルルルルル…… 今日も神様の電話は鳴っています。 プルル、プルルルル…… 朝から晩まで鳴り止まない電話に、神様はいい加減うんざりしています。 目の下には真っ黒い隈がくっきりと出来ていました。 一体どれくらいの間眠っていないのでしょう。 人間が神様との直通電話を発明してからというもの、神様は眠ることが出来なくなってしまいました。 それというのも、毎日毎日電話が鳴るからです。 電話の内容は様々です。 「神様、どうかあの人との恋愛が上手くいくようにしてください」 「明日の試験に合格するようにしてください!」 「何事も無く一年を過ごせますように」 多くの電話は、こういうものでした。神様に直接お願い事を伝えて、叶えてもらおうというものです。 そういう電話に対応するのは、神様も苦ではありませんでした。それは神様のお仕事の中でももっとも重要なものだったからです。 でも、時々こうした電話もかかってくるのです。 「神様神様、どうか教えていただけませんか。どうしてあなたが人間なんていうものを創ったのか」 「どうして善悪を持たせたんだ!最初からみんなが善人だったら戦争なんて起こらないじゃないか!!」 「感情なんて無い方が良かったんじゃないかしら。そうしたら、こんな些細な事で思い悩む必要もないじゃありませんか。ねえ、そう思いません?」 「どうして、かみさまはいるの?パパとママにきいても、おしえてくれないの」 神様はこういった電話の対応にいつも頭を悩ませていました。 どうしてと聞かれても、神様は答えられません。だって、神様にだって分からないのですから。 神様が言葉を濁す度に、相手は怒って電話を切ってしまいます。 ツーツー、という電子音が虚しく神様の耳に響くのです。 こんな対応ばかりされれば、神様だって腹が立つというものです。 大体、何で創造主たる自分がこんなに人間に翻弄されればならないのか。 今日という今日は、人間たちに神様の偉大さを思い知らせてやるんだ!! 神様は固い決意のもとに電話線を掴むと、にやりと怪しげに笑いました。 そして力を込めて、えーい、と電話線を引っこ抜いてしまいました。 先ほどまで五月蝿く鳴っていた電話が、静かになりました。 神様は満足げに微笑みました。 これで人間たちも神様の偉大さに気づくに違いない。 そう思って、久しぶりの安眠を堪能するべく、ふかふかの布団に潜り込んだのでした。 ぐっすりと眠った神様は、気持ち良く目を覚ましました。 今まで電話の音に対してあった苛々や、かかってきた質問に頭を悩ませていたことが嘘だったかのようです。 うーんと大きく伸びをしました。 清々しい気持ちです。 神様は電話線を差し込むことにしました。 今ならどんなに難しい質問にも答える事が出来そうです。 それに、もしかしたら人間たちから謝罪の言葉が聞けるかもしれないのですから。 神様の偉大さを分かっただろうか? どきどきしながら神様は電話線を差し込みました。 すると、いきなり電話が大きな音を立てて鳴り出しました。 これは早速謝罪の電話かな? うきうきして神様は受話器を取り上げました。 けれど、電話の相手は冷たい声でこう言ったのです。 「あーもしもし。あんたが神様かい?あんたと電話が通じない間世界中の人間と話し合ったんだがね、我々は神という存在を拒否することにした。百年もの間放って置かれたり、質問に答えられないような神ではいてもいなくても同じだろう。ではそういうことで」 がちゃり、と受話器が置かれる音がしました。 神様は呆然と、ただ呆然と受話器を眺めました。 しばらくしてから、はっとして慌てて番号をプッシュしました。 プルル、プルルルルル…… コール音が耳元で響いています。 「もしもし」という声が返ってくることを神様は期待していました。 人間がそこまで薄情なはずはないと、そう思っていました。信じていました。 けれどずっとその音が続くだけで、「もしもし」という声も受話器を持ち上げる音も聞こえてはこないのでした。 プル、プルルルルルル…… 今日も電話は鳴っています。 プルル、プルルルル…… 朝から晩まで鳴り止みません。 「どうする?」 電話の前の男は、もう一人の男に向かって尋ねました。 「いい加減しつこいから、電話線抜いちゃえばー?」 「それもそうだな。しかしこうずっと鳴られると、不気味で仕方無いよ」 男はそう言うと、勢い良く電話線を引っこ抜きました。 電話が鳴ることは、もう二度とありませんでした。 <了> お題:神のカルマ/syrup16g お題元になった曲はもっと何というか凄いです。何と表現して良いのか。 syrup16gの中でも、特に好きな曲です。 カルマというのは業のことです。以下、goo辞書から引用。 〔仏〕〔梵語から〕 身体・言語・心による人間の働き・行為。行為は必ずその結果をもたらし,また現在の事態は必ずそれを生む行為を過去に持っているとする思想は,インド思想に広く見られる。 カルマ。羯磨(かつま)。 今回の場合は当てはまってますかね。どうなんでしょうか。 ちょっと神様が可哀想だなあと書きながら思いました。人間って我侭で欲深いですねえ。 いろいろ皮肉を込めて書いた作品。最初は夢オチでもうちょっと神様が図太い感じだったんですけど、出来上がってみたらこうなりました。 少しでも楽しんでいただければ幸いですm(__)m 2004年12月20日 日誌にup
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