渇き。





開け放した窓の外では、この暑さを物ともせずに、セミがうるさいくらいに鳴いている。
どこまでも広がる青空と白く大きな入道雲。
こんな日は、狭い教室の中で方程式を解いていることがバカバカしくなる。
下敷きを団扇代わりにして仰ぐけれど、生ぬるい風が当たるだけで、全く涼しくならない。
昨日のうちから凍らせておいた、ペットボトルの中のミネラルウォーターはすっかり溶けてしまい、机の上に小さな水溜りを作っている。ぬるくなってしまったはずなのに、火照った手にはそれさえも冷たく感じられた。
最近、毎日喉が渇く。
汗をかくからだろうか。
ペットボトルの水滴を、指先でなぞる。
渇いた皮膚に、それはゆっくりと吸い込まれていく。

でも、足りない。

掌で、ペットボトルを包み込む。
渇いた皮膚に、それは浸透していく。
最初は冷たいと感じていたけれど、次第に温められ、ぬるくなっていく。

まだ、足りない。

授業終了のチャイムと共に、ペットボトルのキャップを捻り、口をつける。
潤わされる口腔。
身体の中に蓄積される、水分。
ペットボトルは空っぽになった。
けれど、どうしてだろう。

それでも、足りない。
満たされない。

「香川、そんなに喉渇いてんの?」
そんなに物欲しそうにペットボトルを見つめていたのだろうか、隣の席の高松が声をかけてきた。
「……多分」
「多分?何それ。香川って変なのー」
面白いことを言ったとは思わなかった。けれど、高松は机に突っ伏して笑う。白いワイシャツの下の肩が、小刻みに震えている。
すらりと伸びた腕は、綺麗に日に焼けていた。こんがりと、小麦色に。
その先の、筋の浮いた骨ばった手と指。
ごつごつとしていて、私や女の子の友人の手のように、柔らかそうでは無い。
けれど、私は高松の手と指が好きだ。
放課後、部活で白球を力強く握り締めるこの手が、好きだ。
触れたら、どんな感じがするのだろう。
触れてみたいと、いつも思っていた。
高松の、指に。
手に。
腕に。
肩に。
――高松に。

机の上に突っ伏したまま、高松はこちらに顔を向けた。
「でも、香川のそういうところ、好きだな」
真剣な瞳で、真っ直ぐこちらを見つめた。
射抜かれたような気がした。
喉が渇く。
ペットボトルに手を伸ばすが、そこにはもう、何も無い。
ぽこん、と可愛らしい音を立てて、ペットボトルは床へと落ちた。
高松が拾う。
「何やってんの」
高松が、笑う。
差し出されたペットボトル。
「ごめん」
受け取る時に、一瞬だけ指先に触れた。
高松の、指。
同じように、暑くて火照った指先。

――喉が。
喉が、渇く。


この渇きは、いつ満たされる――?


<了>



夏、渇き、微エロ
をキーワードに書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。
くそう、私に微エロは無理なのか!
骨ばった指とか、肩甲骨とか、二の腕とか、シャツから覗く鎖骨とか、その辺りに色気を感じたりします。
男子高校生の白ワイシャツは良いですよね。
女子高生がつり革とかにつかまってて、セーラー服からチラリと見える白いお腹とかも萌えるよね!
白いブラウスおよびワイシャツが透けて(以下、人格疑われそうなので自粛)

……ええ、まあなんだあれです。
夏はちょっと萌える要素が多いよねってところで。
しかし、私はチラリズムが好きなのだ!(何の告白ですか)

2006年8月9日 up



陳列棚へ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送