宇宙のしっぽ





それはまだあたしたちが世間なんて全く知らない子どもだった頃。
空想が三度のご飯よりも大好きだという隣のあいつは、とんでもないことを言い出した。
「知ってるか?宇宙には“しっぽ”があって、それを掴むことが出来た奴はこの宇宙の支配者になれるんだぜ。この宇宙を続けるか消すかを選択することができるんだ!」
自信満々にそう言った。
へえーほおふうん。それは凄いね、びっくりだね。
あたしは適当に相槌を打っておいた。
嘘嘘。嘘に決まってんじゃないデスカ。
空想に目をきらきら輝かせちゃってさ。馬鹿みたい。
「なんだよ、翔子。信じないのかよ!」
信じるも何も、“しっぽ”なんてあるわけないでしょ。宇宙はでっかい犬か猫かっての。
「うう」
悔しそうに小さく呻くと、あいつ―――真人は駆け出して行った。
そう。本来ならこれは笑い話になるはずだった話。
「小さい頃、こんなこと言う馬鹿な奴がいてね」なんてさ。
なのに。神様はあたしに味方してくれなかった。
この10年で宇宙開発は進みに進み、各家庭に一台、船(シップ)と呼ばれる小型宇宙飛行船があるくらいにまで進歩した。
宇宙旅行なんて海外旅行よりも簡単に出来るような時代になった。
そして、そのニュースが全世界を駆け巡ったのだ。
あの朝のことは忘れることが出来ない。
まさか、真人の夢物語が現実になるなんて、そんなこと一体誰が思っただろう。
宇宙にしっぽがあるなんて!
一体誰が!!
そのニュースを聞いた後、大人たちは挙って宇宙へと飛び出して行った。 地球に残っている人間は、日に日に少なくなっていく一方だ。
あたし?あたしは―――。
あたしは、あいつに無理矢理船に乗せられて宇宙を飛んでいる。
“しっぽ”なんて興味が無い。なのに、10年前あいつを馬鹿にしたのを恨んでいたのかなんなのか。
軌道を確認し、嬉々としてしっぽの位置を推測しているあいつの隣で、あたしは今日も叫ぶ。

頼むから、早くあたしを地球に帰してよーーーーっっ!!



reset or continue?




2005年8月14日 拍手御礼小説としてup





陳列棚へ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送